5月29日、トランプ大統領は中国からの輪入品500億ドル (約5.5兆円)に25%の制裁関税を課し、また中国からの米国ハイテク企業への投資に新たな制限をかける方針を改めて 表明しました。

ホワイトハウスによると、関税対象とする品目のリストは6月15日までに発表すること、投資制限の具体案は同30日までとし、いずれもその後まもなく発効させると説明しています。

先日、ムニューシン米財務長官が「貿易戦争を保留する」と表明し、明日6月2日からはロス米商務長官 が中国を訪問することが決まっている中での新たな発表に対し、中国は非難声明を出すなど応戦を繰り広げています。

米国と中国、2国間の高まる経済的軍事的な緊張の行く末はどうなるのでしょうか。約2400年前の紀元前5世紀、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスは、「新興国が覇権国に取って代わろうとする時、衝突は避けられず、その多くは戦争という形で表れる」と述べています。
それは当時、急激に台頭してきた海洋都市国家アテネと、支配国家として君臨する内陸指向国家スパルタが、約30年に亘る戦争を続けた原因を分析したことから得られた結論でした。

これを現代版に置き換えると、新興国(中国)の白信とプライド、挑戦を受ける覇権国(米国)の不安と恐怖、追う者と追われる者とのゼロサム心理であり、それこそが両国の平和にとって最大の敵であると考えることができます。 米国で歴代国防長官の顧問を40年近く務めた経験のある国際政治学者のグレアム·アリソン米ハーバード大学教授は、新興国と 覇権国のパワーシフトがはらむジレンマを「トゥキディデスの罠」と名付け、米中戦争の危険性を警告しています。

またアリソン氏は、 過去500年間に新興国が覇権国の地位を脅かした類例として第一次世界大戦など16件を見出し、うち12のケースで最終的に軍事衝突に至ったと論じています。
しかし一方では、外交努力などによっ て戦争を未然に防いたパターンもあり、そうした歴史を学ぶことが均衡と安定を保つ手段になるとも述べています。 米国が主導する「白由資本主義」と中国の「図家資本主義」、トラ ンプ大統領が掲げる「偉大な米国」と習近平主席の「中国の夢」。 両国の対立は深まるばかりですが、同時にそれは「鏡に映ったお互いの姿でもあります。

指導者としてより良い道を選択してくれる ことを祈るばかりです。